音楽家の世界 (1953年) (創元文庫〈C 第15〉)

1950年に実業之日本社から出版された原稿に、ドビュッシーの弦楽四重奏の項目を加えて、細かいところを書き直して文庫版にした。バッハからショスタコーヴィチにいたる時代の西洋音楽66曲を主に解説。それぞれの作曲家を育てた時代背景の確実な知識を持ち、作曲家の音楽史上に果たした役割や生涯を簡潔に描く。最後にそれぞれの曲が録音されているＬＰレコードの便覧まで付いている。デュマやハイネなど音楽に関わりのある作家が引き合いに出され、曲を表現する例えにカチューシャとネフリュードフのような小説の主人公が用いられるところは才気を感じさせる。エリック･サティ、プーランク、ヤナーチェクが採用されていないのが個人的には惜しいと思うが、シューベルトやサン=サーンスの中でも知らなかった名曲があげられていた。