写真でたどるロシアの文化と歴史 (「知」のビジュアル百科)

広大な土地からとれる富を背景に、豪華さと素朴さが入り混じった不思議な大国ロシアの魅力が、短いながらもたっぷりとつまった本といった感じです。ロマノフ王朝にイメージされる華麗な世界に憧れる人には、『宮廷の生活』や『皇帝の支配』のページをめくると、エカテリーナ二世の豪華絢爛な王冠をはじめ、オルロフ・ダイヤモンド、馬車、玉座、ファベルジェのイースター・エッグなど、素晴らしい宝物の写真にため息がでます。文豪プーシキンが結婚式で使った冠、イコンや主教の冠などからは、カトリックとはまた違ったロシア正教独特の格式が感じられて、興味深いものがあります。一方で、共産主義政権の時代には、父親を密告して、叔父に殺された少年が、「ソ連邦英雄」として称賛された話など、歴史の暗部をのぞかせゾッとします。それでも、ロシアには、一度行ってみたいと感じさせる強い力があるように、奥深いロシアの一端を見せてくれる内容は、とても良かったと思いました。